Ubud(ウブドの街)
海を持たない内陸の街で、これといった風光明美や史跡といった強烈な観光資源があるわけではないにも拘わらず、この街には世界中の人々が休暇を楽しみにやってきます(実際、景色も史跡も芸能も素晴らしいものがあります。こういう言い方をするのは、ウブドと言えばコレ、というような象徴的なスターがいないという意味です。東京と言えば何が良いの?と聞かれて答えに詰まる感じに似ているかも知れません)。
この街には老若男女、金のある者もない者もやって来ます。長期の滞在者やリピーターが多く、小さな街であることも手伝って、カフェやレストラン、商店の店員、宿のスタッフ、運転手など、街の人々と話したリ顔見知りになりやすい雰囲気です。そして長期滞在者やリピーター達は、街に金だけではないものを残して行くのです。賞讃であったり失望であったり、同じところに何度も通ったり通わなくなったり。サービスを提供する側とされる側のコミュニケーションの積み重ね。同じように世界中からの観光客がやって来る土地であっても(この街の何十倍もの人が訪れる超有名観光地などにありがちなことですが)、一度一回来たきりでそれっきりという客ばかりのところでは、レストランにしてもカフェにしても、客とのコミュニケーションが稀薄で、とりわけ失望を叩き付けられたり来なくなられたりという機会に恵まれず、レベルが高くなりようもないものです。
この街はとてもよく鍛えられている。ウブドの何が良いのかを一言で言うならば、そういうことなのではないでしょうか。
↑←ジャランモンキーフォレスト
街の造り自体は、街造りのお手本とは通常言い難い間伸びしたものです。快適に過ごすためにはタクシー等のトランスポートを手配するかバイク(原付)に乗る必要があります。実際、地元の人の足は原付です。周縁部もふくめてもせいぜい2、3km四方(周縁部のアトラクションはまさに散在と言った感じ)、中心部といったら1km四方程度のさして広くないエリアなのですが、歩いて回るのは若い人でもかなり疲れます。
中心部はジャランモンキーフォレスト(モンキーフォレスト通り)とジャランハヌマン(ハヌマン通り)という平行する南北方向の通りと、それを東西につなぐ通りがつくる南北1km×0.5km程度の長方形。南北の二つの通り間を連絡する東西の通りは長方形の上下の辺をなす2本プラス一本(左写真:ジャランデヴィシタ)だけ。
下写真:ハヌマン通り
この長方形の道路沿いには高い密度で店が並んでいるのですが、長方形の内側の土地の利用のされ方は高密度とは程遠い。参考までに、東京の吉祥寺の中心部はおよそ0.5km四方。細かく路地があり高層で地下もあり公園もありカオス的なまでにアトラクションが豊富です。そうした凝縮された街の例と比較するまでもなく、ウブドの街はいかにも低密度で間延びしており(都市型の観光地としては通常あるまじきことです)、徒歩には不向きな街であると言えるでしょう。
とは言え、道路沿い以外(長方形の内側の部分)の敷地に余裕があると言うことが、リゾート地らしいゆとりあるカフェやレストラン(参照:カフェ・ワヤン)、広い庭やライスフィールドに向って開けた宿(参照:Pramesti BungalowsPramesti Bungalowsの隣のホテルtegal sari)を成り立たせているわけですから、歩く距離が延びることも致し方ありません。実際トランスポートは街のどこからでも容易に手配できますし(そこらへんにたむろしている人に声を掛ければ済む)、のんびりと原付を走らせるのは実に気持ちが良いものです。
店鋪のデザインはバリエーションに富んでおり、手本となり得るものが多数あります。大なり小なりレベル差があることがほとんどで、入口付近のデザインは特に凝っている。
サッカー場沿いの細い路地はなかなか良い雰囲気で、上写真のTutmakのように素晴らしい店もあります。
暑い日中、歩道の日陰でチェスに興じる人々。この時間帯も商店は空いているのですが、ガツガツ商売をする雰囲気ではありません。街全体が、この時間には店員であろうと昼寝でもしている方がよほど自然、といったムードです。これはバリの人々が怠け者だということではなく、活動に適しているのは涼しい早朝と夕方であるということで、地元の人々も観光客も、自然の条件に従っているだけなのです。
狭い街でしかも屋外(店先や路上など)がたむろしている場所なので、街を歩いていて顔見知りに出くわすことは珍しくありません。街が間延びをしていても、人がいるところは道路沿いという狭い範囲なので、結果的に人と出来事は薄まっていないのです。
唯一のスーパーマーケット、デルタデワタ。食品をはじめ生活に必要なもののすべてが揃う。市場の終ってしまった時間帯でも食料品を買えるのが便利なのか、野菜などを買いに来たファミリーゲストハウスのスタッフと出くわしたりもしました。
バイク向けのガソリンスタンド。瓶に入っているのがガソリンです。
学校。朝、多くの生徒が、バイクや車に乗せられて登校してきます。
↓夜のジャランモンキーフォレスト。なかなか雰囲気は良いのですが、歩いている人はほとんど見かけません。歩道(側溝の蓋)に穴が空いていたりと道は荒れているので少々注意が必要です。
ウブド郊外。田園風景のなかを走って行くと、数kmごとに集落や街に出会います。

右写真は街道から細い山道を入って行ったところでみつけた集落。うねる坂道沿いに建物が並んでいます。

また、様々な工芸品の工房や店が何十軒と並ぶエリアがいくつもあります(下左写真)。