Tutmak
現時点の私が知る最高のカフェのひとつ。なににおいて最高か? ドリンク、料理、サービス、建物、調度など、どれかひとつが突出しているのではなく、すべてにおいて高いレベルで調和がとれているのです(より正確には「適切なレベル」。このウブドという街において「適切なレベル」であるということです。ただ、シチュエーションを無視して考えても、建築もドリンクも料理も、東京のどこに出しても恥ずかしくないどころか注目を集め、手本とされ得るレベルにあります)。結果として、居心地の良いこと、自然体で寛げることにおいて、最高のカフェである、ということになるのです。
ウブドの街全般に言えることのひとつですが、建築のデザインは高低差に鍛えられています。起伏の多い地形がもたらした成果なのでしょうが、このTutmakもまたその典型。冒頭写真の側からは上へ上へ、右写真のサッカー場(といっても深い草原程度のものでしかない)の側からは下へ下へ、入って来た人の視線は導かれて行きます。フロアのレベルは主に2つなのですが、ちょっとした段差や家具、座り方のバリエーションによって、客同士の視線を交錯させることなく制御し、無理なく空間を共有させることに成功しています。壁を設けたり低密度にすることでは得られない居心地の良さ。単に孤独になりたいわけではない、人の姿を見たくないわけではない、だから街に出る、カフェに行く。そんな人々にとっては、適度な刺激と適度なプライバシーをバランス良く両立できていることこそが重要なのではないでしょうか。
サッカー場側から入店すると廊下の右側(厨房、トイレなどもこのレベル)に一段上がってメインフロアの片方があり、左側に数段の階段を下ってもう一方のフロアが広がります。
お気に入りの席はサッカー場側から入店してすぐ左に一段降りた中2階のようなレベルにある座卓席。ここが空いていれば、私にとってはここ以外を選ぶ理由はありません。ただ、床座が苦手な人が多いせいか、真先に埋まる席ではないようです。
サービススタッフはよく座卓が設置された床のヘリに腰掛けて、リラックスした調子で待機しています。
↓座卓席から見た店内。レベル差に注目。
フロアを仕切るオレンジの壁の開口率も実に適切。向う側のフロアは主に椅子席ですが、床座席とソファ席もあります。
床座席から高い方のフロアを見る。ここに座って周囲を眺めると、200mm程度の段差が、いかに大きな効果をもたらしているのかが見えて来ます。
サッカー場から入って右側のフロア(高い方のフロア)の床座席から見た店内。こちらは床座席の高さ設定に視線制御の意識が見られない。一方、写真右手奥に見えるソファ席は効果を上げている。
下左写真:サッカー場側外観。
下右写真:床座席からサッカー場を望む。
天井の桟の向こうはポリカ波板。