Domus Aurea(ネロ帝の黄金宮殿)
地下に埋もれていた宮殿は、未だ発掘の途上であり、公開されている部分は発掘の進んだごく一部に過ぎません。現状では、ド―ムの頂点から外光が注ぐSala Ottagonaleと呼ばれる部屋を除いては、まるで光の入らない洞窟のようなところですが、考古学的な興味は別として、現状、空間としては非常に面白いものがあります。主に床から上向きに設置された人工照明が、立体と空間を浮かび上がらせているのですが、その空間が建築的なのです。大地という元となるボリュームから、幾つものボリュームが無作為にくり抜かれ(Void)、その一部は重なり合い、さらに壁が挿入され、開口部が設けられ、といった赴きで、スタイロフォームやスチレンボードを使って行うような造型のスタディが、実物大で行われているかのようなのです。
以下の写真は冒頭写真に示された順路に従っての掲載です。上写真が冒頭写真左下、見学のスタ―ト地点。右写真はそこから続く通路。
このようにインスピレーションに富んだ造型や空間は、我々の精神を問答無用に振動させる力を持っています。
本当に魅力的な造型や空間、そして芸術には、説明や解説などは不要です。合理的な理由のない形態や空間に説明が求められるのは、そしてまた現代美術の展示の見学時間の大半が解説を読むことに費やされているのは、それらが「なぜ?」と問われざるを得ない程度のものでしかないからに違いありません。願わくば、問答無用な造型をこそ目指したいものです。