tegal sari Deluxe Gardenview Room
ライスフィールドと空に向って開かれた客室とは明らかに趣の異なるデラックスガーデンビュールーム。そもそもはレセプションだった建物で、近年新しい建物の建設にともなって改装され、客室となったもの。現レセプションの向い、印象的な緑の門がその入口で(この部屋以外のすべての客室、プール等に至るには、上写真の位置から左に進みます)、塀に囲まれたプライベートな内庭の向うに建物があります。敷地の西側に建物、門は東向き。すなわち、そのほかのすべての客室とは異なり、建物は東に向って立っているのです。
内向的で落ち着いた印象、巣に篭るといった雰囲気。制限された範囲のなかで造り込まれた綺麗な庭は、外から垣間見る限りでは薄暗いのではないかとさえ思われました。実際、ライスフィールドビューの部屋の方が人気があるようで、宿泊客の入れ代わりが激しく予約もとりやすい。確かに、開放的なリゾートの雰囲気ではないのですが、これもまたバグース。とりわけ朝の光がつくり出す光景には感銘を受けずにはいられない。ほかの部屋を体験した後でももう一度泊りたい部屋のひとつです。
通常、バリの建物は西向きに開いているものですがこの建物は真逆の東向き。植栽で日陰を造っているために外から覗くと薄暗く見えますが、室内は充分に明るく、柔らかく優しい光に満ちている。
早朝、折重なる葉々の間を貫いた光線が建物にぶつかってはじける。光の粒子をひっ掴み、乱暴なまでに全力で投げ付けるとこんなふうになるのではという感じ。
テラスの右側は浴室。ガラス窓の上に換気用の飾り窓という構成自体はどの部屋でも同じなのですが、違っているのは東に向いているということ。外から見ると植物に埋もれていることもあり、意識的なデザインは見出せずなんの期待も湧いてきませんが、その内側で起こる現象は息をのむほどのものなのです。
早朝の室内。
建物の造りは、一方に向って開き反対側には小さな窓、というセオリー通り。しかしこのセオリーは、本来建物が西に向って開く場合に適用されるべきものであり、そうした点からも、また他の客室も含めて様々な点からも、建築と方位、自然光の関係について意識的ではないことが見て取れます。結果的に素晴らしい成果が現れているものの、詰めが甘く惜しい点も多々あります。毎日現れる劇的な光も、意識的にデザインに組み込まれたものではないために、それほど感銘を受けずに帰って行く客も多いことでしょう。しかし逆に言えば、そのくらいの方がリラックスできるのかも知れません。
午後の室内。相対的に外が明るいため、ベッドの上の小窓から強い光が差しているように見えますが、実際とは異なります。
室内は早朝夕方を問わず、柔らかく優しい光に満ちています。ほかのタイプの部屋ではテラスが主な生活の場となりますが、ここでは部屋の中で過ごすのが圧倒的に心地良く、テラスで食事やお茶を飲む気にはなれませんでした。
庭のレベルから一段上がってテラスがあり、そのままのレベルで室内に連続(上左写真手前)。食事やお茶をしてくつろぐのはこのレベルにあるソファが設えられた一角で、そこに納まれば自ずと視線の位置が最高の高さに設定されることになる。そこから数段上がってベッドスペース。このレベル差がもたらす効果には計り知れないものがあります。
室内のトーンはアンバー色が使われたほかのタイプの部屋よりも一段明るく柔らかい。木部は基本的に木目に白い塗料が残る明るいベージュ。天井はそれよりもやや濃い色調。ソファとベッドスペースを仕切る丸太や玄関ドアはヤシの木でやや異なる色調、特にドアは完全な正解とは言い難い。とはいえ全体的には、光の条件に良くあった極めて心地良いものとなっています。
早朝の浴室。通常、神々しい光に包まれる体験などそうできるものではありません。しかしここでは毎朝、建築がそれを可能にしてくれているのです。
※浴室の床レベルは玄関のレベルと同じ(低い)。それに対して浴槽の位置は高く、浴槽への出入りは高齢者や子供には危険を伴う。